PM-10
マランツはかねてより発売を予告していた、新フラグシッププリメインアンプ・PM-10を国内正式発表しました。2017年2月下旬発売で、価格は60万円(税別)です。

基本コンセプトはセパレートアンプ並みの内容をプリメインアンプで実現、のような感じで、それだけだと他社でもこれまでよくあるもの。

しかし、今回はマランツのこれまでのプリメインアンプとは明らかに異なる点があります。それは、パワーアンプ部へのD級の採用(マランツではスイッチングアンプと呼んでいますが)。

効率の良いD級を思い切って採用することにより、大出力と省スペースを実現。といっても筐体内部のことで、しかも全体としては大型プリメインアンプそのもの。

では、なぜ大きいままかというと、この空いた空間を生かして電源やプリアンプ部を充実させたからです。ここが従来のアナログプリメインとは異なるところで、D級採用のメリットということでしょう。

プリメインアンプながら、フルバランス構成かつフルディスクリート構成のアナログ・プリアンプを採用。マランツ・オリジナルの高速アンプモジュール「HDAM-SA3」によるディスクリート構成・電流帰還型インプットバッファーアンプを構成するなどマランツらしいこだわりで、単体プリアンプ並みの回路を形成しているようです。プリアンプ部のベースになったのは、セパレートアンプの名機SC-7S2/MA-9S2のプリアンプ、SC-7S2とのこと。これは俄然期待できます。

ボリュームは、L/R独立のフルバランス4連電子ボリューム「リニアコントロール・ボリューム」を採用。MICRO ANALOGSYSTEM社の高精度電子ボリューム素子「MAS6116」を2基と、HDAM-SA3による電流帰還型アンプ回路で構成されます。このあたりはマランツ最近の設計の延長で、アキュフェーズ、ラックスマン、あるいはエソテリックとは異なる路線です。ただ、クオリティーには自信があるはずです。

肝心のパワーアンプ部はHypex社のD級パワーアンプ・モジュール「Hypex Ncore」を採用。マランツではこれまでもHypex社のD級パワーアンプ・モジュールを使った手頃な価格の複合機・「HD-AMP1」を出していました。今回使われるのは上級タイプ。

「Hypex Ncore」は、かのジェフ・ロゥランドの高級パワーアンプでも使われている実績のあるデバイス。D級では難しい超高域までの特性を実現していることも大きなポイントです。

Hypex Ncoreモジュールを片chあたり2基、合計4基搭載。定格出力400Ω×2(4Ω)、ダンピングファクター500(8Ω)のBTL構成大出力高性能パワーアンプとしています。プリメインとしては十分すぎるスペックです。

パワーアンプの電源はスイッチング方式(Hypex SMPS)を左右独立搭載。ノイズ対策が肝要ですが、この部分にもかなりの工夫を凝らすことで、解決しているとしています。リアパネルやシャーシにはシールド効果の優れた銅メッキ鋼板を採用しているところなどに表れています。

プリアンプには、なんと大型トロイダルトンランス1基を搭載。スペース確保の賜物です。

整流回路には、新採用の超低リーク電流ショットキーバリアダイオード、平滑回路にはマランツカスタムによる新開発のニチコンブロックコンデンサー(6,800μ×2)を搭載するなど伝統的な高品位化をうまく行っています。

入力はアナログ専用。バランス入力も2系統。さらにフォノにも対応。フォノはMM/MC high/MC low対応。

プリ部に注力していますが、なぜかプリアウトはなし。パワーアンプ入力はあります。ヘッドホン端子はありますが、トーンコントロールはありません。リモコンには対応。

外形寸法は440×453×168mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は21.5kg。中級プリメインアンプクラスの大きさ、重量です。たしかにD級の恩恵で多少コンパクトなのかな、という感じもあります。

スピーカーの組み合わせとしてはやはりB&Wの800シリーズをベストマッチングとして想定してるはず。忘れていましたが、SACDプレーヤーは先行発売のSA-10が想定ペアです。

国内メーカー製プリメインアンプの同価格帯で同等以上の音質評価が得られるかは、従来型のアナログアンプではないだけに注目です。